コンセプト

ディレクターステイトメント

「Double Façade」という言葉には、アートと地域コミュニティの出会いの意味が込められています。ふたつの正面(入口)を持つ建築は、お互いの通路が内部でつながっているのかどうかは入ってみなければ分かりません。今回はそれをアートとコミュニティとの関係に置き換え、アートの側からコミュニティへ、あるいはコミュニティの側からアートへとそれぞれが別の入口からアプローチしたとき、両者は接点を見出すことが出来るのか、あるいは本当に接点はあるのか、と問いかけてみました。ここではアートとコミュニティは相互に理解可能な関係ではなく、むしろ互いに不透明な関係であるということを前提にしています。

また今年はゲストキュレーター制の導入によって、客観的な視点から黄金町の課題を捉えるとともに、より広範な現代社会の課題に対面し、介入しようとする現在のアートシーンの一面を伝えることを試みました。

今回の展覧会を通して、私たちは観客の皆さんとともに、お互いの異質性と共通性を理解し、お互いが敬意を持って共存することが出来る世界を構想するという課題について考えてみたいと思います。

黄金町バザールディレクター
山野真悟


キュレーターステイトメント

年間を通じて約50組のアーティストが滞在制作をしている黄金町が特徴的なのは、アーティストとコミュニティとの関わりが一過性ではなく日常的な風景としてあることだろう。その中で「黄金町バザール」は年に一度の祝祭として開催され、国内外から参加するアーティストや観客と黄金町のアーティストや住民が出会い、新たな価値や視点を発見する場として機能する。そして『黄金町バザール』は今年で10回目を迎える。

世界ではますます保護主義、排他主義の傾向が強まり、多様性や寛容性が顕著に失われつつある。黄金町もまた、違法風俗店との共存と排除の歴史を持つ町として知られているが、そのような過去を体験した黄金町だからこそ未来に向けたポジティブなビジョンが提示出来るのではないか。

日常生活において他者との出会いや、新たな価値観を受け入れることが必ずしも容易ではないとしたら、『黄金町バザール』という祝祭を通じて思いがけない出会いや価値観を提示することで、現行の風潮とは異なる選択肢を示すこと、そして多様な国籍や背景を持つ人々がアーティストとともに生活する黄金町に多様性の受容と共存をもたらすことが今年の『黄金町バザール』としての大きな目標となる。

黄金町バザール2017 ゲストキュレーター
窪田研二

変化する展覧会

会期を2期に分け、vol.1では作品制作のプロセスの公開や参加型プログラムを多数展開します。
vol.2では新作を一挙に公開します。
変化する展覧会

注目のプログラム

私じゃなかった身体たち
ーみんなで踊るヴォーグダンス

タイを拠点に活動するダンサー、サン・ピッタヤー・ペーフアンを講師に迎え、ヴォーグ・ダンスを学ぶワークショップをおこない、参加者とともに一夜限りのボールルームを開きます。

アーティスト:サン・ピッタヤー・ペーフアン

不満の合唱団 in 黄金町

不満を曲にのせて歌う「不満の合唱団」。この黄金町版を、作曲家の西井夕紀子と地元から集めた合唱団のメンバーとつくりあげます。

アーティスト:テレルヴォ・カルレイネン+オリヴァー・コフタ=カルレイネン西井夕紀子

バザールコレクターズ・オークション

美術家の松蔭浩之をオークショニストに迎え、地元住民を招いた「お金のかからないオークション」を開催。落札された作品は会期中に落札者の自宅や商店に飾られます。

アーティスト:松蔭浩之

遠くを近くに、近くを遠くに、感じるための幾つかのレッスン

ドイツのフランクフルトで展開された『マクドナルド放送大学』。この授業を横浜の人たちで翻訳・朗読する試みです。観客は船上でこの「授業」を聴きます。

アーティスト:高山明/PortB

黄金町の歴史と記憶を辿る
ウィンドウギャラリー

開港以降、流通のまち、違法風俗店舗の並ぶまち、アーティストが日常的に活動するまちへと姿を変え続ける黄金町エリアのまちの変遷を、地元の人の記憶を反映させた作品とともに振り返ります。

シンポジウム

1980年代にホワイトキューブからまちに出たアート。現在では日本各地でコミュニティに根ざした芸術祭を見ることができ、黄金町バザールも今年で10年を迎えます。3日間にわたるプログラムを通してなぜアートはまちに出たのかを再考し、これからどこに向かうのかを議論します。

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