ワンシユは木材や金属などを用いて、自然と人工、身体と宇宙の関係を静かに問い続けている現代作家である。本展「非自然自然」は、ワンにとって日本での初個展となる。
中国に生まれ、日本で彫刻を学んだワンシユは異なる文化圏を越境するなかで、素材との向き合い方や身体の感覚を繊細に耕してきた。彼女が彫刻の道に入ったきっかけは、運慶の仏像や青州石刻、山西·双林寺の彩色泥塑など、東アジアの古典宗教美術への深い憧れにあった。
2022年には、熊本市の七所宮にて仁王像二体を奉納するプロジェクトから彫刻を始まった。 「非自然自然」とは、ナチュラルかアンナチュラルかの二項対立ではない。むしろ、自然そのものを「再定義」しようとする繊細な問いかけである。
ブルース·リーの「意図しないことを意図する」という武術哲学に共感するワンは、木材を「すでに美しいもの」として受けとめながらも、あえて彫刻という「意図された行為」を加えることで、自然と人工、陰と陽のあいだに揺らぐバランスを探っている。
本展では、木材のほかにも金属や鉱物絵の具といった地球由来の素材を使い、自然物と身体の行為の交差点にある「存在の痕跡」が提示される。素材は単なる装飾ではなく、宇宙の時間を宿した地層的記憶として立ち上がる。そこにあるのは、完成されたかたちではなく、世界と自分との関係性を彫り出そうとするプロセスの連なりである。
2023
H21×W15×D10cm
Camphorwood, Brass
2023
H180×W120×D100cm
Camphorwood,Silver
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開催概要 会期｜2025年７月28日(月) 〜7月31日(木) ※ 入場料無料 |
Exhibition Details Dates｜July 28 (Mon.) – 31 (Thu.), 2025 *free admission |
アーティスト
ワンシユ
彫刻家。中国生まれ、東京を拠点に、大型木彫や金属彫刻を中心とした立体作品を制作。仏教における宇宙観や儀礼における身体性に強く影響を受け、伝統的宗教美術と現代アートの接続を主題としている。素材と技法の関係性を掘り下げることで、かたちの表層を超えた精神性や信仰との結びつきを立体表現として追求している。
武蔵野美術大学彫刻コース修士課程（2022年）、工芸工業デザイン学科金工コース修士課程（2025年）修了。現在は同大学金工研究室にて助手を務める。
これまでに国立新美術館「東京五美術大学連合卒展」、HIGURE17-15cas、ZOUKEIギャラリーなど国内外で作品を発表。熊本市の七所宮との協働により、寺内に恒久設置される仁王像二体を制作。宗教空間における彫刻の意義と可能性を、現代の視点から再構築する試みを続けている。
会場
Venue
高架下スタジオSite-Aギャラリー
Site-A Gallery Beneath the Railways
住所｜横浜市中区黄金町1-6先
アクセス｜
京急線「日ノ出町駅」または「黄金町駅」より徒歩5分
JR/地下鉄「桜木町駅」より徒歩15分
JR「関内駅」より徒歩15分
地下鉄「伊勢佐木長者町駅」より徒歩10分
